倶進会2006年度 第74回 公開セミナー

「朝河貫一の日本外交理念と学問の実践」

講師:山内 晴子 氏


 2006年7月8日(土)(財)倶進会事務所で開催された公開セミナーに参加した。講師は玉川聖学院講師の山内晴子氏である。同氏は現在早稲田大学で、このテーマの博士論文を執筆中であり、非常に新鮮且つ詳細なレポートであった。はじめに、朝河貫一氏の紹介があった。それによると、朝河氏は比較法制史の世界的権威者で、ジョージ・サンソンやエドウイン・O・ライシャワーにとって日本の封建制度に対する理解の出発点となった日本人初のイエール大学教授である。朝河は生涯の大部分を米国に住み、徳富蘇峰の「国民新聞」にアメリア便りを数多く寄稿、「国民の友」に「日本の外交方針」(1898)を発表するなど、米国から見た日本外交について日本人としての提言を行い、明治・大正・昭和に渡って日本の外交に少なからぬ貢献をした。特に、日露戦争後に日米戦争阻止のため「日本の禍機」を出版(1909)、1946年、敗戦後構想(天皇と民主主義の融合)に関するラングドン・ウォーナー宛ての長文の書簡により、米国の戦後政策に大きく影響を及ぼした。
 山内氏は朝河研究の基軸を次の4点においている。(1)朝河は、この激動する世界情勢の中で、日本はいかなる外交理念を持って進むべきと考えたか?(2)この外交理念を、朝河はどのようにして持つにいたったか?(3)朝河は、学問の実践をどのようにしたか?(4)学問の実践は変化したか?それはなぜか?
 朝河貫一足跡を短時間に鳥瞰したすばらしい講演であった。
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