ワタリウム美術館講演会
熊楠の森を知る(第3回)
「森」の神話−プレ・エコロジストの系譜と南方熊楠
講師:田村 義也 氏

2006年7月8日(土)梅窓院 祖師堂に於いて開催された、ワタリウム美術館主催の講演会に参加した。講師は成城大学非常勤講師、南方熊楠顕彰界学術部委員の田村義也氏である。同氏のお話は熊楠を主体としたものではなく生態学全般をカバーしていた。即ち、生態学の定義に始まり、生態学前史とも言うべき、ギリシャ・ローマ時代から19世紀中ごろまでの博物誌(Natural History)に触れ、時代時代で活躍した人々を紹介した。そして、生態学の誕生と言われるダーウインの種の起源について食物連鎖、遷移、脱宗教、フランス革命、南方熊楠などと関連させての解説があった。南方熊楠と非常に類似した生涯を送った、H・D・ソローについて、熊楠と対比しながら説明があった。また、ホワイトの「ミミズは動植物の成育や土壌の生成に大きな役割を果たす。」と言う小論文を紹介した。「熊楠と生態学」という観点からはかなり外れていたように思うが、1866年に「生態学」という言葉が生まれ、植物連鎖、遷移、生態系、物質とエネルギーの循環の学問が次第に体系化される時代と熊楠の一生がちょうど重なることを考えると熊楠のエコロジー分野での活躍を理解する上で、その背景を知ることは重要であり、非常に参考になった。
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